平田 健治(ひらた・けんじ)

愛媛県産そばのブランド化に向けて

愛麺株式会社 代表取締役 平田 健治

身近なそば

 そばは、千年以上の歴史をもつ良質の穀物として、日本人の暮らしに深く結びついてきました。主食として、軽食、おやつとして、いろいろの食べ方が各地にあり、飢饉対策にも利用されてきました。どんな痩せた土地でも、寒冷地でも栽培でき、短期間で結実することが、『続日本紀』にも記されています。
 長い間、食べ続けられてきた理由は、次のようではないかと思います。
①作物として作りやすい植物であった。②日本人の口にあった美味しい穀物であった。③いろいろな食べ方(蕎麦がき、だんご、おかゆ、蕎麦米)ができる。④続けて食べてもあきない。⑤消化吸収がよく、栄養価が高くて体の為になる。⑥米や他の麺類に比べて長時間煮込まなくて良い。

そばの種類

 収穫したばかりの玄そばを石臼で粗引きすると、黒い外皮がはがれます。そして、①蕎麦の粒の形の保ったもの(=丸引き)と②大きく割れたもの(=割れ)、③割れて2ミリほどの粒になったもの(=上割れ)ができます。
 ③の上割れは全体の3割ほどで、そればかりを選別してひいたものを「さらしな粉」といい、この粉だけでそばを打つと真っ白な「さらしなそば」になります。上割れをのぞいたもの(①②)が、並のそば粉の原料になります。
 ①②をまず最初に軽く引いたものが、一番粉で、これも白い粉です。さらに引いてふるったものが、二番粉。残ったものをもう一度引いたものが、三番粉。最後に残ったものが、下粉で、蕎麦の甘皮の部分になります。
 一番粉は、旨みもあり、香りもよく、甘みのある蕎麦ができますが、粘りの少ないものになります。二番粉以下が、いわゆる「田舎そば」といわれ、香りと歯ごたえと蕎麦独特のあくの強さを売り物にします。

▲生産者の方々と

我が社の取り組み

 5年前、弊社・愛麺株式会社では、四国で生産された「玄そば」で、そばを製品化したいと思いました。内子の大瀬で、そば栽培をされている5軒の農家さんから、19年に「玄そば」を仕入れて製粉し、20年4月『内子そば』として製品化。愛媛の農林水産物の『愛媛産には愛がある』に申請し、600キロの「玄そば」が市場にデビューしました。
 20年の秋は、冷夏の影響で受粉の活動が悪くて実が少なく、最後はイノシシが畑を荒らし、収穫は半減しました。生産量が少なく、年越し蕎麦を出すのが精一杯という状態でした。
 21年春には「玄そば」が途中で無くなり、販売休止。そのため内子、小田、五十崎の農家さんにもお願いして新しく蕎麦の栽培を始めて頂き、暮れには960キロの「玄そば」ができました。
 この年、農林省の支援による国産原材料供給力強化対策事業のうち国産原材料サプライチェーン構築事業の話が起こりました。東宇和農業協同組合と南予地方局が栽培技術提供をして頂けるのです。JA東宇和の農家さん3軒で3品種作付けの3年計画で、製粉会社がそばの分析や検査を行い、ルチン含有量などを統一させます。研修会や愛大農学部の教授の講演などにみんなで参加し、蕎麦に対する知識を取り入れてゆきました。
 21年のそば収穫実績は679キロで、『内子そば』から愛媛産の蕎麦『媛そば』へと名称を変更しました。
 22年には、蕎麦栽培に関する経営並びに技術の研鑽を行い、共販体制を確立して蕎麦栽培の振興を図るJA東宇和そば研究会を設立しました。実需者、消費者に国内産の安心安全で、優良な食料をお届けすることを目的とする会です。この年には、作付け農家さんが6軒に増え、栽培面積93、379㎡、収穫量6000キロに増加しています。
 23年には、農林水産省戸別所得補償制度が、蕎麦栽培に適用されました。しかし、蕎麦の花の咲く頃に大きな台風が来て、水害が襲いました。特に、宇和においては、葉たばこ、大豆、稲の収穫後に蕎麦を栽培するので、畑よりも水田に大きな被害が出たのです。そのため、この年は、蕎麦研究会作付け農家さん9軒、内子農家8軒となり、栽培面積193、000㎡、収穫は4679キロとなりました。

愛麺株式会社
〒791-8036
愛媛県松山市高岡町81-1
 TEL (089)972-8100(代)
http://www.aimen.jp

ブランド化に向けて

 今年は、大洲、宇和で作付け計画が、進んでいます。供給はどんどん増えていますので、需要を増やすことが最大の課題です。
 その一つとして、『媛そば』をブランド化し、県外に供給していきたいと考え、そのための品種づくりを進めていきたいと思います。
 どうか皆さん、愛媛のそばをしっかり育てて下さい。

四国B級ご当地グルメ連携協議会(四B連)
一般社団法人 四B連企画

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