「B級グルメ」は、安価で日常的に食べられている庶民的な飲食物のこと。
このページではA級・B級にこだわらず、
地域の人々に親しまれている食材を使った料理や、
地域の人々から愛されてきた料理の「ご当地グルメ」をご紹介しています。

変な名前のまっとうな理由

 「せんざんき」は、今治地方で食べられる鳥の唐揚のこと。この奇妙な名前には、さまざまな由来が語られる。
 藩政時代の人々が、近見山に生息していたキジ肉を使ったという「せんざんキジ」説
 『今治夜話』『今治拾遺』『愛媛面影』などの史書に、近見山のキジは記載されているものの、「せんざんき」の記述はないのである。
 近見山の麓に住んでいた千さんが考案し、キジを使ったという「千さんキジ」説
 『今治夜話』『今治拾遺』によると、今治の千さんは千利休の末裔で「千家の同姓、鳥生に在り」とあるものの、「せんざんき」についての記載は見つからない。
 鳥肉を千に斬って小さく切るので「千斬切」という説
 「せんざんき」に使う肉はぶつ切りで、小さくする「千に切る」という表現は似つかわしくないのではないか。
 「中国語」の読み方からきているという説。
 中国語では、鶏肉を揚げることを「炸鶏」という。「せんざんき」は「炸鶏」料理のうち、「軟炸鶏」「清炸鶏」のことだという説。
 北海道では、鶏の唐揚を「ざんぎ」という。遠く離れた地域で同じような名前がつくのは、基本的な動作や形状といった共通の理由が挙げられる。しかし、意味不明の料理名というのは、外国の料理が伝わったからというのが多い。
 北海道の「ざんぎ」は、昭和12年(1937)に函館「陶陶亭」の中国人料理長がつくった「炸鶏」料理のことである。料理長が山東省出身のため、「ざんぎ」に聞こえたためだという。
 今治には、戦後間もなく「せんざんき」発祥として繁昌店となった「スター」という店があった。「せんざんき」を食べようと、この店に長蛇の列ができたという。先代のお嬢さんにお話を伺うと、満州で中国人に料理を教えてもらったが、もともとの名は「センザンチー」だったという。
 「スター」が有名になったため、今治地域に料理が拡がったという可能性が大きいのではないかと思う。
 これらから、「せんざんき」は中国語に由来する説が有力だ。
 万人に好まれ、しかも調理が簡単な「せんざんき」が、家庭でもつくられるようになり、郷土料理として定着したのではないかと思う。美味しさとともに、不思議な名前が、人々の心を魅了したというわけだ。
 多種多様な由来説ができたのは、興味をそそられる名前が原因だ。人間の想像力は偉大だが、料理には迷惑この上ないものなのだろう。

四国B級ご当地グルメ連携協議会(四B連)
一般社団法人 四B連企画
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