「キッチン会議場」こと、「おぼけ処 歩危マート」の台所に座る山口由紀子さん。

キッチン会議でまちおこし

キッチン会議座主 山口由紀子さん

普通の台所から生まれた奇想天外の企画
 徳島県三好市の西祖谷山村で『おぼけ処 歩危マート』を営む山口由紀子さんは、「キッチン会議」座主でもある。
 「キッチン会議」の会場は、『おぼけ処 歩危マート』の台所。地域のみならず、県外からもさまざまな人たちが集まり、祖谷から発信する企画やイベントを実現してきた。「キッチン会議」のモットーは「笑い一杯やる気一杯、美味しく飲もう」だ。皆が楽しめるものに一生懸命取り組み、仲間と楽しい酒を飲むことが、明日の祖谷を元気にすることにつながる。
 「キッチン会議」が大きく飛躍するきっかけになったのは、平成5年(1993)に開催された第48回「東四国国体」の式典だ。西岡小学校の校庭に「かずら橋」を架けようということになったが、小さい橋を考える主催者側に対し、「キッチン会議」の面々はそれでは収まらない。どうせするなら大きくて話題になるものにしたいと、老若男女が力を合わせて関係方面を説得し、30メートルもの大きさの「かずら橋」をつくった。
 この体験から、「一生懸命頑張れば、思いは必ず実現する」ということを知ったという。
 山口さんは、「祖谷は何もないところだからこそ、何とかしなければならない」と語る。話が盛り上がり、脱線することもあるが、「楽しくて、面白いことをしたい」の精神が、「キッチン会議」で培われてきたのである。

▲祖谷で採れる野菜と大きな豆腐、揚げ、こんにゃくなどが入った「ぼけ祖谷汁」。もちろん「ボケ嫌や」の意味も持つ。
▲キャイ〜ンのウドちゃんを囲んで「アゲシャブ」。

ふるさとの味を再発見したぼけ祖谷汁

 「キッチン会議」だから、「食」をテーマにしたまちづくりをと考え、「ぼけ祖谷汁」を開発した。祖谷でよく食べられている固い豆腐と大きなお揚げ、コンニャク、ニンジン、ホドイモなど、季節の野菜を入れ、そば粉でとろみをつけた具沢山の汁だ。昔の祖谷地方では、雑煮に餅を使わなかったため、豆腐を餅の代わりにしていた。
 「ぼけ祖谷汁」というネーミングと美味しさ、そして「キッチン会議」の面々の個性が話題を呼び、マスコミにも大きく紹介された。
 キャイ〜ンのウドちゃんがテレビの取材で訪れたところ、山口さんの大ファンとなり、大きな「ぼけあげ」を使った「しゃぶしゃぶ」を「アゲシャブ」と命名してくれた。「キッチン会議」は、普段の自分でいられると、至極ごきげんだったという。
 このような和気あいあいの雰囲気の中、「キッチン会議」のまちおこしプランは育っていくのである。

ザ・地場産(おぼけ処 歩危マート)
徳島県三好市西祖谷山村徳善西7番地(JR大歩危駅前)
TEL0883-84-1111
定休日/第3日曜(1月1日は休み)
営業8:00〜20:00

「キッチン会議」の意義

 「キッチン会議」への参加は、「来るものは拒まず、皆OK」。何かをやりたいと思った人がそのつど集まり、その思いを形にしてきた。
 面白いことを皆で考えるから、パワーと、とんでもない知恵が湧いてくる。「笑い一杯やる気一杯、美味しく飲もう」の精神があるからこそ、皆で頑張れる。明日の一杯があるからこそ、祖谷の元気をつくりあげることができる。
 最後に、面白い話を聞かせてもらった。昨年行われた満濃池のイベントで、ビールをもらった。皆が「キッチン会議」に集まってビールを飲んだが、次第に酔いが廻ってくる。「普通のビールよりもおいしくて、酔いが進む」と誰もが感想をもらした。ビール缶をもう一度見ると、そこには「ノン・アルコール」と書かれてあった。しかし、間違いなく、誰もが酔っていたそうだ。
 「キッチン会議」の「心を酔わせる何か」を求めて、今日も人々が集まってくる。楽しさに酔うことが地域の幸せにつながるということを、「キッチン会議」の面々はわかっているのだろう。

 

四国B級ご当地グルメ連携協議会(四B連)
一般社団法人 四B連企画

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