四国の川事情
愛媛県の肱川と重信川、香川県の土器川、徳島県の吉野川と那賀川、高知県の四万十川に仁淀川、物部川と、一級河川8水系が四国に流れている。
日本最後の清流と呼ばれる四万十川や四国三郎の名で愛される吉野川など、四国山地の深山幽谷に源流を発し、各県をまたがって悠々と流れていく。その美しい風景に加えて、豊穣の水をたたえる川は、豊かな食材を生み出すのである。
鮎とうなぎが四国の代表
四国を代表する川魚は鮎だ。鮎は、川底の苔を食べて育つことから、身体の中にふるさとのすべてを貯めていく。鮎の味が千差万別という所以だ。だからこそ、地元の人々は、自分の住んでいる川で獲れた鮎の味を誇るのである。
鮎は、「塩焼き」を始め、「雑炊」、「鮎めし」、「甘露煮」などに調理されるほか、「うるか」や「姿干」になり、酒の肴や料理のダシとして使われる。
天然うなぎも、四国の川の名物だ。一度入ると抜け出せないことから「地獄」と呼ばれる特殊な筒でうなぎを獲る。脂がさっばりしていて、旨味がはっきりしているのが天然うなぎの特徴だ。近年、住宅から出る生活排水のために環境汚染が進み、天然うなぎが獲れなくなってきたのが残念だ。
大きな川の下流で獲れるハゼ科の小魚も四国の食卓をにぎわせてきた。吉野川ではジンゾクといい、「たらいうどん」のダシに使う。四万十川ではゴリといい、「天ぷら」や「煮もの」にする。
逃げ足の速いゴリを捕まえるには、川底を無理にさらえて網をかけねばならない。無理強いを「ごり押し」というのは、この漁に由来するという。
味噌仕立ての川魚料理が「ひらら焼き」だ。砂糖と酒を加えた味噌で鉄板に土手をつくり、そのなかで川魚と山菜、豆腐、コンニャク、シイタケなどを入れ、味噌の土手を崩しながら材料を焼いていく。山の中の地方で食べることの多い料理である。
溜池の多い香川では
香川県になると、川魚料理でも様子が変わってくる。満濃池の「ゆるぬき」に代表されるように、田植えを終えると溜池の水を抜き、池に潜む魚を捕まえて、スタミナ源とする。そうして捕えたフナやどじょうが食卓に登場するのである。
うどん県である香川の川魚料理に「どじょううどん」がある。もともとは「どじょう汁」といい、仲間が集う際の料理だった。川魚の泥臭さが気にならなくなる冬にフナを獲り、野菜とともに酢味噌仕立てにした「てっぱい」という料理もある。どちらも、かつて家庭でよく食べられた味だという。
美しい四国の川を守ろう
四国の川も、環境悪化の途をたどっている。四国の多彩な川魚料理をなくさないためにも、きれいな川を未来に引き継ぐためにも、「環境を守る」という自覚が必要だと痛感する。 |