山道を走って桃源郷へ
『四季美谷温泉』は、高速道路徳島道脇町ICから国道192号、国道193号経由で約2時間ほどの距離にある、山中の温泉宿だ。徳島県が進める「阿波地美栄」の「うまいよ! ジビエ料理店」認定の宿でもある。
支配人の地下足袋王子こと平井滋さんは、あいにく所用で留守だったが、この4月から料理長となったNAKAさんこと中田雅之さんに話を伺った。
山仲間の支配人は、勝浦郡上勝町出身の中田さんに、長年にわたって就任を要請、ようやく実現した。料理の腕に惚れこんだ支配人が望んでいた人材なのである。中田さんは、「四季美温泉の行き帰りには、いつもシカに出会う。鹿肉をメニューに取り入れなければならない」と考えていたという。
シカ肉の美味しさを活かす
『四季美谷温泉』の鹿肉メニューを口に運ぶと、鹿肉は固いという印象が頭から消えてしまった。表面を軽くあぶった「シカ肉のステーキ」は、シカ肉の滋味と歯ごたえを残しながらも、とても柔らかい。醤油味のタレにつけ込んだ「立田揚げ」もサクサクと噛み切れる。何時間も部位を煮込んだホクホクの「またぎ汁」は、味噌の香りと野菜がマッチした逸品。どの料理も、美味しさと工夫に満ちている。支配人が、中田さんを望んだ理由がわかる。
中田さんに柔らかさの秘訣を伺うと、「火加減の調節に尽きる」とのこと。「同じ土地でとれたもの同士は、料理の相性がいい」と、自然豊かな那賀町木沢地区の食材をふんだんに使う。山の幸、川の幸、野の幸に満ちた料理の数々は、食べる人びとの笑顔を自然と誘う。ゴールデンウィーク明けには、考案したさまざまなシカ肉料理をお客様に出す予定だという。
風景を楽しみながら山道をドライブして『四季美谷温泉』につけば、中田さんの料理に舌鼓を打ち、「美人の湯」といわれるたっぶりの温泉につかることができる。疲れた心を癒してくれる絶好のスポットだ。 |