捕獲イノシシの肉を販売
徳島県との県境にほど近い東かがわ市五名地区は、四国霊場結願の寺である88番札所大窪寺のお膝元だ。
今から15年ほど前、五名にイノシシが現れるようになり、農作物の被害が深刻になってきた。収穫を前にした稲やサツマイモなどが狙われるため、近隣の田畑にイノシシ防御の電気柵を備えた。こうしたイノシシ被害を食い止め、食材として利用しようと考えたのが、「五色の里」代表の木村薫さんだ。
イノシシのワナを仕掛けるのにも手間がかかる。仕留めるための猟や銃の免許更新にも費用がかかる。必死で捕まえたイノシシは、肉にして自分たちで食べるか、知り合いにあげるかという方法をとったものの、食べ切れなければ捨てるしかない。そこでイノシシの肉を販売することで経費を捻出し、多くの人にイノシシ肉を食べていただこうと考えたのである。
口コミで広がる美味しさ
美味しいイノシシ肉を提供していると評判なのが「五色の里」だ。木村さんは、五名の山ふところにある自宅の横に解体所を構え、食肉処理と販売の免許を取得した。イノシシの肉は臭みがあるといわれるが、最初の血抜きがうまくできれば豚肉以上の美味しい肉になる。ていねいな処理が施された「五色の里」のイノシシ肉は評判になった。
五名には、美味しいイノシシ肉があると口コミで広がり、今では全国に顧客を持つようになった。ファックスや電話での注文があれば、さまざまな部位の味が楽しめるイノシシ肉をチルド便で郵送する。自宅にいながら、美味しい五名のイノシシ肉を味わうことができるのである。
木村さんが域内のイベントで始めたのが「イノシシの丸焼き」だ。地域への恩返しと始めたイベントは、無償ということもあって行列ができるほどの人気だ。特に、若い人に好評で、丸焼きにするために、串に刺さったイノシシの姿を面白がって並ぶという。ホットケーキ風の皮でイノシシ肉と野菜を巻いた「ししバーガー」も好評だ。
頻度は少ないものの、香川県でのイベントにも出店するようにもなった。木村さんはイベントを通じて「五名の良さをみんなに伝えたい」と語る。 |