うどんの友はドジョウ
ふるさとに伝わる料理
平賀源内が生まれたことや、88番札所・大窪寺から「結願の町」として知られるさぬき市の、長尾保健センター横に『嵯峨野』がある。京料理専門のようだが、うどんの店として知られる。ここの名物が「どじょううどん」だ。
香川県では、うどんとともにどじょうが食べられることが多い。溜池の掃除の際、捕まえたどじょうを野菜やうどんとともに、味噌仕立ての鍋で食べる。農村の行事である「打ち込みうどん」のどじょうバージョンで「どじょう汁」とも呼ばれる。
麺の美味しさに驚く
『嵯峨野』では、どじょうをきれいな水に入れて泥を抜き、お酒と塩で洗って臭みを取る。崩れないよう、酒で軽く煮たものを使う。
ゴボウやサトイモ、ニンジン、油揚げなどを入れて味噌で煮るが、こだわっているのは味噌のブレンドだ。いくら煮てもコクのある味噌にするために、時間をずいぶん費やしたという。
びっくりするのは、うどん麺の美味しさだ。煮ものに使ううどんは塩を抑えるため、だんご汁のようなふやけた麺になってしまう。ところが『嵯峨野』のうどんは、コシがあるのだ。さすが、うどん県の料理だと感心する。
どじょ輪ピック
今年で19回を迎えるのが「どじょ輪ピック」だ。県内外から集まった10数チームが「どじょううどん」の味を競うイベントで、毎年11月の第3日曜日に開催される。
このイベントの世話人であるさぬき市議会議員の松原壮典氏は、「誰もが自分のつくったどじょううどんを美味しいと自慢する。それならば、その味をみんなで競って研鑽しよう」と、このイベントを始めた。「どじょううどん」を愛することは「食育」につながる。将来のさぬき市を担う子どもたちが、ふるさとの味を覚え、郷土愛と環境保全の精神を育んでいく「きっかけ」になるイベントなのである。
かつて田んぼでいくらでも捕まえることのできたどじょうは、農薬でいなくなったと、松原氏は嘆く。休耕田を利用して、さぬき市産のどじょうが育つ日も、近いかもしれない。 |