来島大橋を眺めて食べる
来島海峡の鯛めし
今治市域の中央を流れるのが来島海峡だ。昔から「一に来島、二に鳴門、三と下って馬関瀬戸」と唄われるように、潮の流れが速く、海の難所として知られている。
この海峡は、「鯛」の漁場として全国に知られていた。「鯛」は春になると、外海から産卵の場所を求めて瀬戸内海に入る。卵を抱えて色をピンクに変えた「鯛」を「桜鯛」という。潮の流れの激しい来島海峡で育った「鯛」は、身が締まって美味しくなるのである。
来島海峡大橋は、世界初の三連吊り橋。その偉容を眺めながら「鯛めし」を楽しめる店がある。しまなみ海道の今治の起点、糸山の山頂近くにある活魚料理『大潮荘』だ。
本来は来島海峡大橋と瀬戸内の景色を全室から眺めることのできる宿泊施設だ。朝に夕に、刻々と変化する瀬戸内海の風景と、来島海峡を渡る大小の船の動きがあいまって、いつまでも見つめていたくなると評判だ。
また、『大潮荘』は、レストランを併設している。テーブル席、座敷、個室など全100席もあり、ここからも瀬戸内海の風景を眺められる。
料理は来島海峡の旬の素材を使った海峡料理。 法楽鍋に塩を盛り、この上に魚介をのせて卵などを揃えて焼き上げる「法楽焼」をはじめ、瀬戸内の魚介類が堪能できる。
料理には、「鯛めし」がついている。鯛の複雑な旨味が混じりあい、上品な味わい。昭和38年の創業から、『大潮荘』の「鯛めし」は、多くの人びとの舌を楽しませてきた。
「鯛めし」は、半升釜や一升釜、宿泊の方のための土鍋などで、一気に炊き上げる。旨味を醸す脂分のコントロールが、美味しさの基になる。
社長の村越哲治さんに美味しさの秘訣を伺うと、「素材の良さも勿論必要なのですが、米と鯛のバランスが一番大切なんです。鯛が多すぎると臭みが出る。米が多すぎると物足りない。先代の母から教えられたつくり方を、かたくなに守っているだけですよ」と笑う。
来島海峡で育った鯛のみを使った伝統の「鯛めし」。取材を終えての帰りぎわ、村越さんは「地域の誇りを伝えていくのが、郷土料理なのかもしれませんね」と語った。 |