「B級グルメ」は、安価で日常的に食べられている庶民的な飲食物のこと。
このページではA級・B級にこだわらず、
地域の人々に親しまれている食材を使った料理や、
地域の人々から愛されてきた料理の「ご当地グルメ」をご紹介しています。
(画像提供/宇和島市観光協会)

鉢盛料理の主役は
覆面か? 福めんか?

 南予の豪華絢爛な「鉢盛料理」は、祭や祝い事などの場で饗される。大きな鉢にたくさんの料理を盛り、食べるときに取り分けるこの料理は、古来からの響宴の作法であり、それが今に伝えられたものだという。この鉢盛料理で、必ず出てくる料理が「ふくめん」だ。
 麵のように細かく切ったコンニャクを鍋で空煎りし、醤油、ダシ、砂糖、みりんで味をつけ、大皿に盛る。その上に紅白のソボロと小口ねぎ、みじん切りにしたミカンの皮をきれいに敷きつめる。白、赤(ピンク)、緑、黄の彩りが美しく、あっさりめのコンニャクと薬味による味の変化が楽しい、上品な料理である。
 薬味で下のコンニャクが見えなくなるほど覆うため「覆面」の名がついたといわれるが、この名前の由来には首を傾げざるを得ない。室町時代の料理書『包丁聞書』には、鯛や鱈などの干物をあぶってむしり、叩いて繊維を砕き、綿のようにしたものを「ふくめ」と記している。これから考えると、「ソボロ=ふくめ」が転訛して「ふくめん」になったと思われる。
 色とりどりの「ふくめん」には、「陰陽五行」が関係している。「陰陽五行」というと、おどろおどろしたものを連想しがちだが、現在でも冠婚葬祭、年中行事、十干十二支やおみくじ、占いなどの私たちの日常生活に深く関係している。天空の星を中心として木・火・土・金・水の五つの元素がプラスとマイナスに作用するというのが「陰陽五行」の思想である。例えば、相撲の大屋根には、青、白、赤、黒の房が下がっているが、これは東西南北をあらわす。高松塚やキトラ古墳には、青龍、白虎、朱雀(赤)、玄武(黒)の幻獣が描かれていたのも方位を示している。
 日本料理もその影響を受けている。料理の盛り付けには、青(緑を含む)、赤、黄、白、黒の五色を使う。五味は、酸、苦、甘、辛、鹹。五穀は、米、麦、粟、豆、黍(稗)。切り方も丸は「陽」となり、四角は「陰」。これらを調和して盛りつけることは、「宇宙」を表現することにつながるという。
 鉢盛料理のような「ハレ」の場での食事は、神に捧げる供物としての役割を持つものが多い。派手な色や語呂合わせの料理名などは、縁起の良さを強調する。
 コンニャクも供物として精進料理などによく使われ、ミカンの皮のみじん切りは「陳皮」という漢方薬だ。縁起の良い派手な色の材料を配した「ふくめん」は、文字どおり「福めん」なのである。
 祝い事にかこつけ、仲間と宴を楽しんで料理の美味しさに舌鼓を打つ鉢盛料理。「ふくめん」を食べて、神々から与えられた豊穰の恵みに感謝をあらわすことが必要なのかもしれない。

四国B級ご当地グルメ連携協議会(四B連)
一般社団法人 四B連企画
@