渡邉秀典(わたなべ・ひでのり)
しまなみイノシシ活用隊・隊長、今治市青年農業者協議会員、おみやげ喫茶『大心』代表
▲大三島の食肉施設処理施設外観
▲処理施設内部

嫌われもののイノシシを
どう活用するか?

四B連愛媛支部イノシシグルメ部会・部会長 渡邉 秀典

 私が実家の柑橘 農家を継いで8年が過ぎた。愛媛県内の農産物直売所を回り、「自分で売るなら農業はきっと魅力的な職業となる」との思いから就農したが、今、地域の農業にとって大きな問題が起こっている。それがイノシシによる農作物への被害である。
 就農当初はイノシシの話など聞いたこともなかったが、島の一部で被害が出ていると聞くようになって2年もすると島全体で問題となっていた。もちろん柑橘だけでなく、甘藷 やスイカ、米に柿、栗、タケノコと、なんでも食べられた。対策のため講師を呼んで勉強会を開き、柵を設置したり、島外から猟師を呼んで捕獲してもらったり、自分たちでも罠猟の免許を取得して捕獲へ取り組んだりした。それでも被害は広がる一方で、罠を設置すれば毎日の見回りに時間を取られる上、イノシ
シがかかると2~3人がかりで半日は仕事を休んで運び出し、解体し、そして埋めるという作業が必要となった。
「イノシシは減って欲しいが、自分の仕掛けた罠にはかかって欲しくない」という状況だった。
 そんな中、他県にイノシシを処理して販売している例があると聞き、数か所視察に出かけた上で、自分たちでもできる範囲でやってみようと食肉処理施設の設置を目指した活動を開始した。行政や地元猟友会との2年ほどの話し合いの結果、市の遊休施設を借りることになり、「しまなみイノシシ活用隊」として平成22年11月末より食肉処理業の許可を得た業務を開始するに至った。所用資金は200 万円だった。
 午前中にイノシシが罠にかかっているという連絡を受けると隊員が止めさしに向かう。施設に持ち込むとすぐに内臓を処理し、水に浸して冷却する。その後自分の仕事の都合をつけて集まり、剝皮
、抜骨、肉の切り分けを行い、記帳して冷凍する。大きな施設ではないので、解体はすべて数種類のナイフによる手作業である。
 60キロのイノシシを延べ11時間かけて解体すると平均24キロの肉がとれるが、捕獲者・解体者への日当と施設維持費を加えると、どう計算してもこれだけですでに一般の豚肉の3~5倍の金額になってしまう。その上、地元の旅館や飲食店にイノシシ肉を持って回ってみても、まだまだイノシシを食べる習慣が地域に根付いておらず、また、島に来る客は魚料理が目当てであり、なかなか関心がもたれないという難題が待ち受けていた。
 イノシシを地域の食材としてきちんと活用していくためには、調理に通じた方々と連携して本当に美味しいイノシシ料理を提供していかなければならないと考えていた矢先、四B 連との出会いがあった。四B連はさっそく「イノシシグルメ部会」を立ち上げてくれた。多くの方々の協力のもと、イノシシ肉の特徴を出した美味しい料理を創ることができ、それにともなって流通が整備され、捕獲に弾みがつき、さらにそれらが地域おこしにもつながるなら、願ってもないことである。

四国B級ご当地グルメ連携協議会(四B連)
一般社団法人 四B連企画

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